「製造業の経営動向(平成27年度版 TKC経営指標 ※1 より)
平成27年(同年1月~12月決算まで)における製造業の経営動向は下記に要約される。
売上高は平成26年に比べ7,370千円増加し(対前年比102.5%)、限界利益も前年から3,609千円増加した(対前年比102.7%)。一方、固定費では、前年と比べて、人件費が1,225千円増加するなど、固定費合計で2,383千円増加し(対前年比101.9%)、経常利益は、前年から1,227千円増加の7,878千円となった(対前年比118.4%)・・・・
▣ サイトマップ Site Map |
経営者の考えを実現するために会計情報をもとに、3年、5年の利益計画を考える必要があります。
企業の経営理念はそれぞれですが企業経営を考えた場合、その最大の目的はお金を残すことにあります。
だとすれば、企業の税務会計を任されている会計事務所の役割は経営者の考えを実現して、いかにして企業経営に寄与するのか、にあるのだと思うのです。
ある飲食店チェーンの場合
創業10年目で、現在4店舗で展開中。創業以来売上は伸ばしてきたが、ここ2~3年、利益面で伸び悩んでいた。
この会社については、店長の給与評価を売上金額のみにおいていたため利益が悪くなってきたことが原因だった。
店舗ごとの損益計算書をつくり、店長の管理できる材料費、人件費、水道光熱費等を管理可能費用として、売上から管理可能費用を差し引くことで管理可能利益を明確にした。
この会社については、店長の給与評価を売上金額のみにおいていたため利益が悪くなってきたことが原因だった。
そして今後の対策、今後の目標値を提案するようになるまでに変えていくことを目指す。
給与体系も管理可能利益を評価基準に変える。
また月次決算でも、管理可能利益が早期に算出できる体制を確立、毎月の店長会議で目標と実績を検討するようになった。
この仮定の中で、会社が真の意味での利益を生み出せる事業計画を経営者とともに練ることができるようになる。
こうして、この会社は数年来の減益を脱却し、増益体質に変わっていった。
ある自動車関係 多角経営企業の場合
新車・中古車の販売から自動車整備業、運送業、保険業など、多角的に事業を展開する。
会計情報導入のきっかけは、各部門ごとにしっかり利益を出す仕組み作り。そのための部門損益管理の実践に踏み切った。
運送業に関して、トラック1車両ごとに1部門として管理を実施。
例えば運送業の3大経費である「燃料費・有料道路代・整備費」を 運賃収入から差し引いた金額を車両ごとに照らし合わせた。
結果、一番金額の高い車両と一番金額の低い車両に5倍もの格差が出ていた。
この「評価損益」をもとにドライバーの歩合給を定めるように変更したところ、ドライバーは利益を少しでも多く出すために、時間に余裕のある時は高速道路を使わない、停車中には燃料の無駄遣いをしないようエンジンをこまめに切るようになった。
各部門の実績は、その部門責任者の力量で決まる。
「部門別利益管理表」を責任者が読みこなし、業績向上のためのアクションを起こせる力をつけることに取り組んでいる。
ある水産加工企業の場合
ホタテ貝などの水産加工業。
会計情報導入のきっかけは生ものを扱っているため、水揚げされたその日のうちに工場で加工・冷凍しなければならない。
しかしその日の水揚げは、天候等の影響で変動が激しい。だが、会社の体力(収益性)をつけていくには、その日の損益をその日のうちに正確に把握することが重要である。そうでないと、資金調達をするにあたっても、常に正確な判断ができない。
そのために、タイムリーな財務会計情報を判断できるように会計導入に至った。
毎日の損益の把握と、正確な月次決算が可能になった。
また、決算の3ヶ月前にはかなり正確な「予測」ができるようになった。
「科目コード」を使って商品ごとに売上の管理を実施。
どの製品がどれだけ前年または前月に比べ伸びているかがわかるようになった。
決算予測データをもとに、あらかじめシミュレーションによって起こるべき事態を取り込み、資金繰り面でより効果的な手を打つ。
ある服飾販売店の場合
デパートの場所を借り、メーカー(DCブランドの婦人服)の販売請負いを現在8店舗で展開。
会計情報導入のきっかけは店舗数が増えてきたため、パソコンにより各店舗の業績を部門別管理するため。
店舗の売上に対する販売員ごとの売上のシェアがどうなっているかを常に把握。
販売員または店舗の売上が落ちている時には、社長自らがお店に出かけていって、直ちにその原因が商品にあるのか、売り方にあるのかを調べ対策を練る。
社長と店長との個別ミーティングには、「部門別損益管理表」を必ず使う。
各店舗の店長に帳票を見せて、自分の店舗の実績を知ってもらう。
これを繰り返してきたことで、ただやみくもに働いて売上を上げても、それがきちんと利益に結びつかなくてはダメなんだということがわかってきた。
この教育の成果で、経費のムダを省き、人件費の不用意な増大も防げるようになった。
会社の業績を伸ばしていくために、きちんと採算の取れる店舗運営のできる店長を育成することが、キーポイント。
ある服飾(着物)の販売の場合
服飾(着物)の販売2店舗と喫茶店1店舗を経営する企業
会計情報導入のきっかけは「週40時間、1日8時間」の改正労働基準法への対応の中で、大型店との競争の中で労働時間を有意義に使っていかなくてはならない。
今までは1ヵ月に1,000枚以上の伝票を記帳代行者が毎月3日間くらいかけて算盤にて処理していたが、限界になってきた。「今までの人員で経理処理ができ、かつ部門別損益管理をするためにはコンピューター化が一番」と薦めれたことから実施。
売上の3分の2に相当する額を在庫として抱えているため、資金負担・資金繰りの管理が非常に重要になって来る。
その意味でコンピューター会計により、債権債務の状況がすばやく正確に把握できることは大きな効果であった。
また、本店及び2つの支店の部門・予算管理により、競争による相乗効果がある。
お互い他の店の状況を見ることで改善の手だてを探れるようになる。
集計された「結果」を手にするまでの速さも、大変役立つ。
顧客との結びつきの強化。催し物に多くの人に参加してもらい、自社のカラーを見ていただくことで"ファン"をつくっていく。
ある土木業者の場合
事業内容は土木と舗装工事の事業を展開。
会計情報導入のきっかけは完成工事高(売上)が伸びていくのに全くというほど儲からなかったため。
こういった事業内容を柱とする企業の場合、公共土木工事に置いている会社は、経営内容、特に肝心の利益率が悪いと入札の指名を受けられない可能性もでてくる。
経費をひとつひとつの費目ごとに金額が見えて来るようになると、どこから利益が漏れてしまっているのかが分かるようになる。
工事の実行予算と現場別工事原価の比較をコンピューターを使って実施した結果、現場監督に原価意識が出てきたことが大きな成果である。
例えば、工事材料は適正量をきっちり見積もって発注する、ガソリンなどの燃料も1円でも安いスタンドで給油するようになる等。
また、経営者として見たいデータを見たい時にすぐ見られることも大きい。
コンピューターから出力される「責任者別業績順位表」を賞与の基準としている。この方が公平であり、特に30代以下の若い現場監督には、数値で示さないと納得してもらえない。
公共工事が今後も増えていくと必ずしも考えられないため、事業活動の場を広げていかなくてはならない。合併ということも考えられよう。
経営事項審査を念頭に置いた経営内容の充実を図る必要がある。
以上、財務会計情報を経営に役立て、業績を拡大されている事例のなかのいくつかをあげさせてもらいました。
我々は、このシステムを「戦略財務情報システム」と呼んでおります。
先にも記した通り、このシステムの導入は決して高価で難しいものではありません。
会計情報を経営に積極的に役立て、いっしょに業績を伸ばしましょう!