「製造業の経営動向(平成27年度版 TKC経営指標 ※1 より)
平成27年(同年1月~12月決算まで)における製造業の経営動向は下記に要約される。
売上高は平成26年に比べ7,370千円増加し(対前年比102.5%)、限界利益も前年から3,609千円増加した(対前年比102.7%)。一方、固定費では、前年と比べて、人件費が1,225千円増加するなど、固定費合計で2,383千円増加し(対前年比101.9%)、経常利益は、前年から1,227千円増加の7,878千円となった(対前年比118.4%)・・・・
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工場の海外移転、材料費の高騰、競争による売値の停滞、後継者問題、従業員離れ等、中小企業メーカーにとって厳しい環境が続いております。
一見他の業種に比べ製造業は落ち込みがひどいだろうと思われますが、弊所クライアント様(中小企業)の会計数値を見ていると、製造業(メーカー)は他の業種に比べてよい数値を残しております。
中小企業のメーカーは一見弱みに思われる下記の事項を、むしろ強みに変えて力を伸ばしております。
特定の技術領域に特化掘り下げていくことで、目に見えない技術・ノウハウ・知識が付く。
このような暗黙的なノウハウはライバル企業にまねできない、又は存在すら気付かない強固なものとなっている。
大企業にとっては規模が小さく効率性の問題から参入できない市場も、中小企業は永く深耕することができる。
小さい市場だからこそむしろ顧客と密着でき、顧客とともに技術力を高め成長することもできる。
特定の市場での勝負において、専門化がいなかったり又は採用できなければ負けと考えてしまうことがある。
但し、素人のアイデアがむしろ革新につながるケースも多く見られる。素人には既存の理論にとらわれない自由柔軟な発想ができる、相手も素人だといろいろ教えてくれることがある、等専門家にはまねできない利点がある。
中小企業のメーカーの場合、形式的な処遇面では大企業に劣ってしまうのが一般的である。
但し、大きな権限を任せられる、経営者と従業員との連帯感が強い、大きな発展の可能性を秘めている、等達成感・満足感を引出すことによって従業員も能力を惜しまず企業に貢献し、それが技術力の強化につながっている。
ものづくりを通じて諸外国に勝る技術力を永遠に発揮してこそ日本の生き残りがあり、無限の可能性がある中小企業メーカーの潜在能力の開拓・発揮(顕在化)サポートを、弊所の重要テーマとして心がけております。
自社の強みを一緒に見つけましょう!
原価計算とは、製造のために要した費用(原価・コスト)を製品別若しくは製品群ごとに割り当て(集計し)、
ものづくりにどれだけの費用を要しているのかを算出するとともに、売値との差額を出して企業が生み出した利益(付加価値)を明確にすることであります。製品ごとの利益が分かれば、
● 利益が低下している(ひどい場合原価割れ)商品からの早期撤退(マーケット戦略)
● 利益率を大きく取れる商品へ資源を投入(マーケット戦略)
● 原価を分析することで無駄なコストに気付き、削減の策を打てる(生産戦略)
● 仕入原価の高騰に際して、値上げ交渉の必要性に一早く気付く(価格戦略)
といった戦略(リーダーシップ、方向性)を打ち出しやすくなります。また月次決算にて原価を明確にして分析すること(マネジメント)で製造に従事する人々の行動結果が明らかになり、評価制度と連携することで士気向上にもつながります。
中小企業の強みは、戦略の切り替えが早くできる、行動も早くできることにありますが、このメリットは原価という情報が適時適切に把握できてこそ、初めて活かされるのであります。
原価計算の必要性は上記に述べておりますが、少量多品種の材料・部品等が様々な倉庫及び作業場所を日々出入りすることから、原価計算の実施には、システム化が必須です。システム化にて下記の情報を構築し、経営戦略の策定及び進捗管理に役立てます。
材料・部品の入出を把握できていないと、現在どこに、どれだけの材料・部品があるのかが分かりません。外注先を使っていなければ、自社の棚を目で見ても在庫数は概ね分かりますが、倉庫が複数あったり、また無償支給にて外注先に自社の材料等を支給している場合には、現時点での在庫数を把握することはシステム化抜きには不可能です。
システム化にて材料・部品の出入り及び在庫数を場所別にタイムリーに把握できれば、下記に役立ちます。
▦ 適正在庫数を設定することで、無駄な在庫を抱えなくてすむ(資金の効率化)。
▦ 製品の標準構成を登録することで、受注時に必要材料の確保(引当)ができる。つまり途中の工程で材料欠品による完成、納入が遅れる事故を防止できる。
▦ 材料、部品を定期的に実地棚卸することで、減耗・破棄・紛失等の事実を把握し、発生を抑えることができる。
実際原価計算・・・・
製造原価を製品群別、工程別等に分解することによって、製品ごとの採算(売上-原価)を把握できます。現在の事業戦略では、次の事業の柱を作る、そのためには不採算事業からの勇気ある撤退が必要であります。
そのためにも製品群別等の採算の把握情報は不可欠です。原価を製品群別等に分けて月単位等で集計するためには、システム化が必要であります。
標準原価計算・・・・
製品の標準構成をシステム登録することで、製品完成時の標準での材料・部品等の使用料及び外注費等の標準原価を集計できます。
月単位で標準原価と上記実際原価を比較分析することで、異常な原価発生、想定原価が実際と著しく乖離している製品の抽出(販売戦略にも影響)等把握ができます。原価の削減・製造工程の効率化施策実施、販売戦略の見直し等に役立ちます。
販売管理、仕入管理システム等と連係させて、日々の実態が可視化できます(今日までの製品別売上は?製品別粗利益は?予算に対しての進捗は?等部署間で共有できる)。
システムの連携化にて、個々の業務が切り離されたオペレーションレベルを脱し、経営者が知らなくてはならないマネジメントレベルの情報を、早期・適切、かつ見やすく出すことができます。
1)会社側のニーズ
▦ 部品数が数多く、かつ協力工場に無償支給をしており、在庫の把握が必須であった。
▦ 所要量計算を行うことで、生産の効率化を図りたい。
▦ 現在の原価管理システムが使いにくい、かつ毎月の保守料が高かった。
2)解決への方策
▦ 管理システムの入れ替え
▦ 全部品の動きに対してシステム登録
3)導入への課題
▦ 業務管理現場でのシステム変更に対しての抵抗。(今まで部品の出入りに関して、パソコンへの入力さえ行っていなかった)
▦ 協力工場に対して、部品の出入りを所定伝票に記載することを要請。これに対しての抵抗。
▦ 導入期のシステム化指導体制への不安。
4)現在の進展状況
システム導入後 3 ヶ月にて、在庫管理を新システム一本化に移行できた。新システムに移行して保守料が大きく下がったこと、担当長の社内での在庫管理の改善への大いなるリーダーシップの発揮、システム開発会社の丁寧なる指導、協力工場を含めた関係者の協力といった各々の賜物といえる。
※1:今回導入のシステムのご案内
株式会社 センチュリー・システムズ(本社 東京都中央区新川)が開発した、 Censys Pentad (センシスペンタ)。詳しくは同社のホームページを参照ください。
では中小企業の原価計算活用の実態はいかがかというと、ほとんどの企業が行なっていないか、若しくは何十年前に作った制度を大して更新もせずにそのまま使っている状態です。
情報を持たないまま市場にて大企業若しくは外資企業と競争しているわけですが、現在まで生き延びてこられたのは、先に記載した中小企業こそのメリットがふんだんに活かされていたからでしょう。但し、過去の貯金・経験だけでは今後も生き残っていける保証はない大きな危機感・不安を多くの経営者が、そして中小企業の従業員が抱いていることも事実でもあります。
では、なぜ誰もが必要と考えている原価計算を導入できないのか、もしくは導入しても間もなく運用をやめうのでしょうか。それは、
このようなマイナス情報(勝手な限界)が社風として根幹的な部分に染み付いているからなのです。
企業再生をサポートする方々から聞くと、再生案件の中小企業は「これがいくらで作れる」を分かっていない企業が数多く存在しており、再生の第一歩が原価計算の導入及び今まで原価計算の導入支援を行なってこなかった会計事務所の交代からまず行なう事が多いそうです。
クライアントをこのような再生への道に落とし込まないためにも、弊所では経営者の方々はもちろんのこと研修を通じて従業員方にも意識付けを徹底し、会社に合った原価管理の手法の導入運用を支援することで、企業のリーダーシップ・マネジメント強化(優良企業への道)の後押しを徹底すること、心がけております。